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オーロラ、地球と太陽のささやき 写真撮影(その八) オーロラは、地球上いつでもどこかで現れる。だが人の目にその姿を表すとは限らない。観測しやすい場所でないと、オーロラの神秘に触れることは出来ない。オーロラは、極光と言われるように,ほとんどの場合、北極か南極に現れる。南極と言う特殊な場所をのぞけば、伝説はほとんどが,北半球に偏る。 極北には、5,6千年前頃からエスキモーが住んでいた。 彼らは,地域によって少しずつ違うオーロラの伝説を持っている。 彼らの間では、人は死ぬと動物に生まれ変わると信じられている。その動物が死ぬとオーロラに生まれ変わるという。北欧でも生と死の繰り返しの中でオーロラが出てくる。 オーロラは地上80〜100キロ以上の上空に現れる現象だから、地上に覆い被さったり、また地上から天空へ翔け登っていることはない。ましてや口笛を吹いたり,大声をかけたとしてもオーロラに届くはずもない。 言い伝えの多くは,子供達に正しい生活習慣を身に付けるためにある。いまでも極北では,オーロラの伝説に、数多くの日常生活の教え込まれている。狩猟の民である彼らにとって、オーロラは、獲物の前兆なので、逃げられないように静かに見守る。近代世界では、大人がする無神経な不作法に子供の世界も脅かされているが、ここでは壊されることなく、今も生き続けている。 そういえば,子供頃、"夜遅く、口笛吹いたらだめよ。泥棒が合図と間違えて入って来るから。早く寝なさい"としかられたことがある。 夜,口笛吹くと、おねしょするよと言われる地方もある。 今回が、私にとっても初めての赤いオーロラだった。場所探しから、シロクマ対策までなにもかも新しい経験であった。いままで写真撮影にやってきたのとは大違いで,この経験は忘れられない。置き去りにされたような空っぽな地で、赤いオーロラを見たことは、夢の世界としか思えない。 空っぽの世界だからこそ、赤いオーロラの神秘さが一段と増す。 オーロラ帯は、北極と南極の極付近を中心にリング状にあるが,オーロラがよく眺められるのはアラスカのバロー、カナダのイエローナイフを通り、チャーチルのあるハドソン湾の西南を経て、グース湾。グリーンランドの南部,アイスランド、ノルウエーのトロムセー,ロシアのノールビクなどである。南極でもオーロラ帯はあるが、その非居住地域であるので、めったに行けない。チャーチルでは年間百日位、オーロラがでる。夜の長い冬には,一晩に五回見ることが出来ると言う。 今まで見たオーロラは,すべて雲のように乳白色、薄緑色や黄緑色だった。磁気が弱い時のオーロラは、色も形もを識別することは出来ない。でも始めて見る旅行客にとっては,ほとんど雲のようなオーロラでも大喜びだ。オーロラは,刻々と濃さを変え、、形も変えていく。強い時には、揺れ動く光のカーテンやリボンのようにも見えるし、渦巻いたようにもなる。時には,揺れ動くカーテンの裾が強い光を帯びたようになることもある。まさに、天空に広げられる舞踏会である。 しかし、今夜、現れたオーロラは,赤く、天空からカーテンを吊り下げたようにもなるし、また地面から天空へ駆け登るようでもある。それは、朝焼けでも夕焼けでもない。夜の天空に聳え立っている姿は,途方もなく広がっている。まるで巨大な生き物が,空から"おいで。おいで"と招いているような気にもなってくる。優雅と言う表現を通り越し、恐怖さえ感じさせる。赤いオーロラの下のほうには、黄緑色が出現している。その色合いは,華やかさと言うより繊細である。その繊細さこそ、神秘的な世界へと引き吊り込ませているのだ。浮かび上がったオーロラは,まさに太陽からの手紙なのだ。(続く)
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