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チャーチルの夏、そこは命が輝くところ (その十一) 短い極北の夏は,生き残りの瞬間だ〜@ツンドラとマルハナバチ 地球は誕生以来、様々な過程を経ている.それに約10万年ごとに寒暖を繰り返しているのは、地球自身が楕円軌道を描いているからだという. 騒がれている地球温暖化は、12万年の間で最も暖かいとも言われている。 生きているものには,あまりにも長すぎる話である.この1万5千年位の時間で十分である。 むしろ地球がここ数十年の間に、温暖化が顕著化しているということのほうが,現実的だ。 長い間かけて、地球温暖化が進み、チャーチルでも厚い氷河が溶けて、その下に隠れていた岩が顕れてきている。場所によっては,小さな丘のようになっている所もある。 夏には、重い氷河が移動してきた跡がをはっきりと見ることができる。それは岩に刻まれた時の記憶だ。 派手な動きの鳥や狐など追いかけてしまうのは、大忙しで時間も費用も限られて撮影をするものには、無理も無い話しだ。しかし、本当の極北の大自然の不思議を見過ごしてしまう。 一瞬のような間だが,極北の夏の真っ盛りだからだ。しっかり観察しなくてはと心に誓う。 * 日本など、暖かな地域で育った者からは、夏とは言え極北の生態系は、恐ろしく殺伐としたもの世界と考え勝ちである。 しかし見渡せば,岩や砂礫の部分を除けば、緑のカーペットだ。背は低いが,極北特有の草花が、あたり一面を埋め尽くしている。そこを歩くと,まるで厚いじゅうたんの上を歩くのと同じ感触で"フワ、フワ"としている。 青空の中,白い雲がゆっくりと流れる.頬をなでる風もやさしい。あの厳しかった冬の烈風など想像もつかない。極北の夏は、フワフワだ。 ガイドのブライアンと大の字になって、仰向けに寝ている.
ここ数日は,風もほとんどなく、空はどこまでも青い。まるでこの静寂は永遠に続くような気になる。 予定表、交通の時刻表、目まぐるしく飛び交うニュース、仕事の目標数字、ここではなんら関係がない. 空に浮かぶ雲が、次には何の形になるかを待つ。形がどう変わろうと、眠くなったらそのまま寝てしまえばいい. それに寝ている二人は,ほとんどお花畑の中に、埋め込まれているようだ。 嗅覚を研ぎ澄ますと、草とほのかに花の蜜の匂いがする.体中の力がほとんど抜けたようだ。心のどこを捜しても角というものがない。天国とは、こんなところだろう。 とは言え,傍らにシロクマが出た時の注意に銃がおいてある。夏でもこの辺りは、いつシロクマが現れてもおかしくないからだ。
"Hisa! どうだ!夏のチャーチルは?"とブライアンは私に訊ねる。 "天国みたいだ。満足,満足"。 "そうか、良かったな。Hisa! 何が見える?" "青い空さ、それにカナダガンが飛んでいるね" "そうだな、Hisaが来るのは、いつも秋か冬だから、今とは大違いだな・・それだけか?"と、空を眺めながら訊いてくる。 まばらにトウヒの木が見える。ここの植物は,0〜10℃くらいで生育するといわれる.それ以上の温度になると、暑過ぎるために生育を止める.勿論0度以下では、凍り付いてしまうから、水分がなくなって、生育することはできない. 年間を通じて生育する時間がほとんど無い。 高さも2メートルになるまでに,100年の歳月を要するという。数百年のトウヒやヤナギの木を探すのは難しいことではない。 あとは、花を一杯つけた高さ20-30センチくらいの草しか見えない. "ブライアン!何かいるのか?"と体を起こす."ハチの大群だ!!"。 (続く)
しろくまとのおはなし (2)自然は 不思議だね
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(C)1997-2006,Hisa.