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チャーチルの夏、そこは命が輝くところ NEW!! 6/6/03 (その十二)短い極北の夏は,生き残りの瞬間だ〜マルハナバチは自然界の仲人さん リムスキー・コルサコフの歌劇『サルタン皇帝の物語』には「くまん蜂の飛行」という曲がある。悪者を追い回す「くまん蜂」の羽音を音楽の世界で表現した名曲で、聞く人をいつの間にか蜂の世界へ引き込んでしまう。 この曲は、正しくは「マルハナバチの飛行」とのことだ。もともとふっくらした胴体であるが、さらに体は長い毛で覆われ、その毛に花粉が付くとなお丸くなり、そのためクマバチとの区別が難しくなる。 蜜をいっぱいお腹に溜め込み、足や体には花粉をつけて飛ぶ姿を音楽で現したものだ。 * 周りをマルハナバチが”ブ〜ン、ブ〜ン”ではなく、もっと早く"ブン、ブン"と飛びまわっている。いつも忙しそうに飛ぶ姿は、その飛行も高さ1メートル位で、ハチ同士がぶつからないのが不思議くらいたくさんいる。 ブライアンは、"Hisa! そのままでいろ"と、起きあがるのを制する。 いつも彼が言うことを思いだす。"目に映るもの、ここで起こることの全てを写真に撮れ。地上を這いずり回るようにして五感を総動員すれば、住む人達の暮らし方、自然現象との関わりが見えてくる。磨くんだお前の持っている五感をな。決して退屈することは無いはずだ" "忘れるな!五感で感じることはインプットなのだ。それを心に感じたり、写真にあらわす行動が、アウトプットだぞ。何のにおいがする、何の音が聞こえる?匂いも、音も聞こえないのは、アクションがないということだ。インプットだけでは意味ないぞ” "それに冒険家ぶるな。自分の感性で感じろ。俺が手伝うから、やってみろよ。いままでに俺のトラックに乗って撮影するのは、お前だけだぞ" 一人でいくら頑張っても、浅く狭いものでしかない。畏れの心が薄らいだら,自分の見る世界は小さくなってしまう。ありがたい提案だ。 ブライアンが口癖のように言う。 ”Hisa! チャーチルには、毎年たくさんのカメラマン、何組ものフィルム・クルー(映画やテレビ番組の撮影隊)が来るんだ。だからチャーチルの人たちは、カメラマンやフィルム・クルー(撮影隊)にはすっかり慣れているんだよ。 でもな、旅行業者が案内人であったりして、ヘリコプターで飛び回ったりしながら、大変な金を使っているよ。金を使わせないと旅行業者が儲からない仕組みになっているからだよ。もったいないよな。 撮影する人たちも、言われるとそのほうがいいと思うんだな。だから出来上がる作品は、誰が作ってもたいした違いはない。 中には、十分に調査しないで来る連中もいるからな。来た連中は、なんだかみんな誰かに振り回されているみたいだよ。北の自然に振り回されないでな。 1年間、チャーチルに居座って撮影した者は、だれもいないんだよ。俺たち住人だけさ。俺、30年間以上ここにいるからな。お前に教えたいのは、寒さも、大自然の知恵も丸ごとつかめ、這いずり回るように、ゆっくり、しっかり体験しながらするのだよ” いつの間にか、デズニーの記録映画”砂漠は生きている”を見たときの自然の美しさ、不思議さに興奮したことを思い出す。
"ウッワ!!こんなにたくさんいるではないか。刺さないか?"と、以前、蜂の大群に車を追いかけられたことを思いだす。 "Hisa! このハチは、蚊とは違うのだ、刺すわけがないだろう。チャーチルでは,刺すのは蚊、バッグ(ぶよ)、そして寒風だけだよ"。 横になっていた私には,青い空しか見えないが、彼は自然界の営みを丸ごと捉えているのだ。 "Hisa! よく見てごらん、背丈が低く揃った草は、一斉に花をつけているだろう".ここは、公園と違って、あまりにも規模が大きい.花もほとんど同じ高さに咲いている。夏が短いから草木が大きくなれないだけではないのだぞ。これでないと生きられないのだ"。 ブライアンは、北の自然を話しながら、自分の生き方を話しているのだろう。 "マルハナバチにとっても、極端に短い夏の間に懸命に蜜を集めるためには,同じ高さのほうが蜜を集めやすい。背の高い木があっても、ハチはお構いなしさ。彼らは、自然界での効率と言う知恵を十分知っているんだ。人類が誕生する前からな。 低い所に咲いている花の密しか集めない。後の花にはお構いなしさ。チャーチルの植物の背が低いのは,自分達だけでは十分に受粉出来ないからだ。背が高ければ生残れない"。 良く見ると,ハチは蝶が舌を糸のように長く伸ばして、花の中に差し込んで蜜を吸うようにしている。ミツバチの仲間でもマルハナバチの口だけが、長いストローのようになっている。飛んでいるときはあごの下に収めているので見にくいが、花に近づくと突き出すようにして、花筒から早く、たくさん蜜を吸う。 ミツバチは、餌を見つけたとき、ダンスをするようにしてコミュニケーションをすると言うが、マルハナバチにはそれは必要がない。寒さのため他の昆虫が生き残れないから餌をとられないのだ。それは、いろいろな花が均等に咲くからと言う。連絡をしあわなくても、大量に花があるからだ。花から花へと中へ蜜を吸い、花粉を運びまわっている。 問題は、花の咲く期間が短い。 科学者は、昆虫と植物の共存というが、ハチも草花も生残るには、このような方法しかないのだ、懸命なのだ。まるで神様が作った掟みたいに。 それにこのハチのおなかには,自分と同じ体重の蜜を貯めることが出来る。 足や体には長い毛がびっしりとつけて、体温維持を図っている。この毛こそ、花から花へと花粉をたくさん付けて運ぶ、そのため花の受粉ができると言う。 自然界の仲人さんなのだ. こんなマルハナバチは、短い夏の間、2〜3週間以内に産卵をし、羽化し蜜や花粉集めをし、長い冬に備える。こんなエネルギーが極北にあるのだ。 どんなに寒くても、花さえ咲けば、彼らは大忙しで効率よく働く。それは、体中に生えている毛も寒さから守ってくれるが、花の蜜を熱に変えれる優れもので、体温を35〜40℃に保つことが出来るからだ。 冬になると、チャーチルでは温度が下がり、マイナス40℃以下にもなる。そのように寒さになっても体内の蛋白やトレハロースの濃度を調節することで凍死することもなく、過酷の条件でも生き抜くことをする。 この優れもののマルハナバチだからこそ,寒くなっても9ヶ月〜10ヶ月も冬眠をしつづけられる不思議を持ち合わせている。 日本でも、その特性を利用して、トマト、いちごなど、受粉目的でも飼われている。それに、ツリフネソウやイカリソウのような花は、マルハナバチがいなければ花粉が運ばれず、タネができません。マルハナバチは自然界の中では大切な役割をしている。 企業経営が効率にのみ向けて努力をするが、マルハナバチの生き方の中に何か学ぶヒントがあるのではないか。 きっとここにも自然のメッセージがある。
しろくまとのおはなし (2)自然は 不思議だね
予告.
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