しろくまが、歩く町、チャーチルの人達
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しろくま、ホッキョクグマが歩く町、チャーチルの人達
(その七) チャーチルの先祖達は、マンモスハンターだ。

太古を探るには、彼らの残した物に頼るしかない。それがどんなに小さなかけらでも、例えば彼らが傷つけた岩や骨、火を使った焦げ跡など、有力な手掛かりになる。

遠い昔のことだからこそ、科学者は途方もない時間がかかる。そして忠実に、事実だけを伝える。それでないと未来を誤る。

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ここ数年の地球温暖化のニュースは、すでに注意を払わなければならないことを示唆している。氷河が急速にやせ細っているのだ。とくにヒマラヤでは、年間70〜100メートルに達しているという。

チャーチルでも、秋、辺りのハドソン湾が凍りつくのが年々遅くなっている。五年間でも、その変化は顕著だ。夏になって、湾の氷が溶けるのも早くなっている。それでも、冬期には、−40℃位にはなる。アイスエイジ(氷河期・1万4千年前)が終わろうとしていた頃は、想像を絶する寒さだったと想像される。

”Hisa!シャッターチャンスだ!早く写真を、撮れ 撮れ!”と、ブライアンが騒ぐ。車から15〜20メートルくらいの距離だろう。450キロくらいの雄のシロクマが二頭じゃれている。めったにこんな近くでは、じゃれあうシーンにお目にかかれない。

"ガオー”と言う叫ぶ声や”ドスン、ドスン”とぶつかり合う音も聞こえる。なかなかの見応えである。写真を撮るにには絶好のチャンスだ。”頑丈なトラックの中で良かった”と安全であることに胸をなで下ろす。

急いでいるフィルムを入れ替えようとしているのだが、寒さのため指先が思うように動かない。”シロクマに、少しそのままでいてくれと頼んでくれ!”と勝手な頼みをする。”ワッハッハッ・・・俺、写真家じゃないから知〜らな〜い”という。

野生動物の撮影は、動物がいればいい写真が撮れるとは限らない。10〜15メートルの至近距離で、陸上最大な肉食動物を撮れると言う方がどだい間違っている。

 

   

旧石器時代の人類にとっては、狩りも写真撮影と同じことだろう。たくさん動物がいればいいのではない。その居場所が問題である。距離が近くても、海の中では困る。ましてや1万年も前だと、ボートも狩りの技術も不十分であっただろう。だから至近距離で狩りをしなければならない。

木や動物の骨に挟んだ尖った石を投げたり、石の斧で動物狩りをしていたからだ。

遺跡には、当時の生活模様がたくさん残されている。石を付けた槍の柄も、UBC人類博物館へ行くと見られる。

動きの早い動物は、狩りをするには無理だった。草原を走る動物は当たる可能性がすくない。狩ったとしても、地リスなど小動物で家族を養いきれない。

カリブーも、川などを渡るときはチャンスだが、ボートや弓矢が作られるまでは、ほとんど眺めているしかなかった。何十頭、何百頭を狩るなど不可能だった。

死んだ動物とか、弱っている動物やまだ動きの鈍い子供の動物なら、狩ることは出来ただろう。

  

アイスエイジ(氷河期)の南の端には、マンモスのような巨大な草食動物が住んでいた。むしろ人類がアフリカで誕生した6〜7百年前から、常にマンモスは同じ地に住み続けていた。かって人類が居住していた所にはマンモスの化石が発見される。マンモスが移動すれば人類もまた移動した。

太古の人類は、動物の脂は燃料、毛皮は衣類やテントに、骨は住居の柱や槍の柄などに使われた。骨髄は食用に供せられた。

中でもマンモスは大きさから見ても、理想の動物であっただろう。一頭4〜6トンもあれば、少なくても2トンくらいの肉がとれたであろう。一頭で、50人くらいの集落の2ヶ月分の食料を賄うことが出来た。

特に、氷河の先端は、夏場になれば餌となる植物が多く、群で行動する。中には、沼地などに足を取られ動きが鈍くなるのも現れる。沼地はいたるところにあり、マンモス狩りの天然罠だった。大型動物をたやすく捕らえることが出来た場所である。

発見されたい遺跡の中には、大量のマンモスの骨とともにマンモスの絵なども発見されている。古代の人類の生活には、マンモスは特別の動物であった。 

発見されたマンモスの胃袋には、小さなトウヒの実、ヤナギ、スゲ、コケなど湿地にはえる草木が発見されている。まさに、これらは、現代のチャーチルでも見られる草木である。

”明日、ツンドラへ出たら極北の草木の香り嗅いでみよう!きっとマンモスが嗅いだのと同じ香りを嗅げるかも知れない”

(参照:講座 マンモスとしろくま・ホッキョクグマ)

(続く)

 

(参考にした資料)『考古学が分かる、AERA Mook』『文化人類学を学ぶ人のために、世界思想社』『図説大百科 世界地理カナダ・北極、朝倉書店』『モンゴロイドの道・朝日選書』『モンゴロイドの地球・極北の旅人、東京大学出版会』『モンゴロイドの旅人・最初のアメリカ人、東京大学出版会』『地球温暖化の真実、ウエッジ選書』『アメリカの起源・B Fagan』『The Call of Disitant Mommoths,P Ward』『マンモス復活作戦、旺文社』『一万年の旅路、P Underwood』『アメリか先住民の精神世界』『民族の世界地図、文芸春秋』『世界地図から読む食の歴史 辻原康夫』『カナダ=エスキモー、本田勝一』『Alistair Cooke's America』『地上から消えた動物・ハヤカワ文庫』『北の狩猟民族とともに、関野吉晴』『極北のシベリア・福田正巳』『生命と地球の歴史・岩波新書』『絶滅巨大獣の百科・今泉忠明』『宇宙のゆらぎ 人生のフラクタル、天外伺朗・佐治晴夫』『20世紀のわすれもの、佐治晴夫』

 

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