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第六話 チャーチルだ!(その一)
−荷物がない!− 休みの前日 無色の世界は、日常の生活感覚からするとだいぶ座標軸がずれている。まるて音も消されてしまった気になる。いつも都会では、溢れるほどの刺激に晒されていたということか。ここでは身を隠す何物もないし永久凍土を目の前にして、成す術もない。 小さなプロペラ機のタラップを降りると、飛行機の貨物室から手荷物が渡される。それは、飛行機が小さいので小さな荷物以外はすべて貨物室に預けなければならなかった。 飛行機から足をおろしたとlころは、ざらざらと凍りついた滑走路がある。ただ滑らないように、飛行機から25メートルほど歩くと、小さく重い木製の戸が待っている。"ウヘー、これが空港ターミナルへの入り口なのか。ウイニペッグ空港のトイレのドアーと同じサイズではないか"自動ドアーもなく、エスカレーターもない。日本の離島の空港を思い出していた。 慎重に調べ、検討し、たどり着いた憧れのチャーチルなのか。いやチャチル、中継地のバンクーバー空港で、チャーチルと言ったら、空港の人が"えっ?"と怪訝な顔をして聞き返した。チャーチルではなくチャチルなのだそうだ。帝国書院の地図帳にだって、チャーチルと書いてあるじゃないか。 何はともあれ、チャーチルに着いた。ある種の感動なのか不安なのかが走る。極北の地と、そこに住む地上最大の肉食動物・シロクマに 興味を持ち続けて来たが、考えればよくもまあ……。 ターミナルビルの中に入ると、チェックインカウンターが2つあるだけ。 ロビーには、フードの周りに毛皮がついた厚手のパーカーや重そうな靴を履いた人たちが、飛行機から降りてきた人たちと、抱き合って再会を喜んでいた。出迎えに来た人の方が、飛行機から降り立つ人の数より、はるかに多い。 壁に目をやると、『困った時には、この電話の受話器をお取り下さい』と、英語とイヌイット語で書かれた看板がある、何かほっとした。"この町の人は きっと親切なのだ"。 ところがだ、何と荷物がない! 待てど暮らせどウィニペッグで預けた荷物が見あたらない。ツンドラの景色より、もっと暗い気分になった。もし出てこなかったらどうしよう。下着6枚、靴下12足、下シャツ6枚、ワークシャツ6枚、フリ ースのジャンパー3枚、セーター2枚、ウオーマーパンツ6枚、もも引き6,スノーモビル用オーバーパンツ1本、手袋2枚、ビーバーの毛皮の帽子1、フリース製の目出帽子1,ホッカロン200枚、フィルム200本、カメラ2台、レンズ5本、カメラ用予備の電池4個、三脚1本、そしてマイナス70℃に耐えられるブーツ、そして梅干し1瓶とが入った荷物がない。この極寒の地で、これから、どうなるだろう。運良く次の飛行機で、荷物が運ばれてきても、明日の15:00まで待たなければならない……。 顔の血の気が引いたのが解る。さほど広くないターミナルビルに中には、人は消えてほとんどいない。(つづく)
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