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心の底には、もう一人の自分がいる 野生動物写真家への思い (その一) 仕事は、麻薬中毒患者のようでもある。面白いと思えばいくらでもエネルギーが出てくるし、でも逃げたらきりがない。 金融マンとしての仕事は、刻々と変わる世界の情勢と競争するようだ。海外の同僚と昼夜関係なく電話をし、昼は情報端末機と睨めっこをする。お教えを貰いたい人にはどこまでも訪ねたし、神や仏にもお教えを請いた いと思うこともあった。 刻々と変わる世界の情勢についていくのは、まるで下りのエスカレーターにのり、反対の上へ向かって走っているようなものだ。立ち止まったら最後、状勢の変化に追いつくのは大変なことだ。 本人は、結構楽しんだつもりだが、仕事している姿は、冷静に考えれば喜劇である、深く考えれば悲劇かもしれない。取扱金額も大きく、自分の財布の中身とは、ゼロが途方もなく違っていた。外国へは当たり前のように仕事で飛 び回ったので、夏休みなど休暇以外は、家族との時間も限られた。 おかげで世界の金融都市にある劇場、レストランや商店は、自分の住んでいる町より詳しくなった。それでも気になったのは、大自然を闊歩する巨大な野生動物だった。 以前、欧米へ行くときには、飛行機は必ずアラスカのアンカレッジ空港へ給油のため着陸した。そこには、800キロ以上もあろうか巨大なシロクマの剥製がある。今考えれ ば、その巨大さは見るたびに、シロクマへの興味が増したのだろう。極北のシンボルと言われるシロクマは、巨大だがしなやかな身のこなし、その高貴な 雰囲気は、まさに神からの贈り物としか表現しようがない。 シロクマの名は誰でも知っているけど、ほんとうの生態はほとんど知られていない。シロクマを知っている人のほとんどは、痩せこけて哀れな動物園のシロクマだけだ。いつか、天にオーロラが 舞い、氷の上では孤高に歩くシロクマがいる所に行ったら、どのような表現が出来るかと考えるようになって行く。 それからというもの、本、インターネットのホームページ、図書館、カメラやフィルム会社、写真展、調べられるだけのことはした。ところが日本ではなかなかいい資料に出会えない。出張で海外へ行くと、寸暇を惜しんで本屋に 通った。どのくらいの本に当たっただろうか、雑誌も含めて300冊は超えただろう。 続く |
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