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しろくま,ホッキョクグマと歩く −はじめてのことだらけの日々− シロクマが犬を襲う(その一) ブライアンが犬を飼っているところは,道路から、ハドソン湾へ向かったところにある。そこは、どんなことが起こっても、誰も見つけてはくれない。道路からは、小高い丘の向こう側だから、見つけだしてくれる人もいない。 町から一歩出たら、そこは空っぽだから,ここまでくると空っぽの世界からも見えない。 入り口には、鉄の鎖で閉められているのが、ここは彼の私有地だという唯一の目印になる。この目印があると言っても、あとは、はるか彼方には昔、座礁した貨物船が見えるくらいである。その先にはとてつもなく大きなハドソン湾が口をあけている。もっと北を見ようとすれば、北極だ。 十月の半ばなのに、まだ海には氷は見られない。氷が張らなければ、シロクマはアザ * "ブライアン!これどのくらいの広さ?"とただ呆れるばかりの広さを聞く。 * ブライアンの私有地につくと,野生生物保護局の役人が、車の中へティータイムを取りに入って来た。一緒にコーヒーとおやつを食べる。"食べろ食べろ、飲め飲め、水分を十分補給しろ"というのがブライアンの口癖である。 彼がカリカリに焼いたベーコンは、とても旨い。栄養価も高く、重いカメラ機材と重装備の衣服で行動する者にとって、最適な食べ物だ。
遠くにシロクマが豆粒のように1頭見えるだけで、危険はない。あたりには、昨夜の内に歩き回っていたシロクマの足跡がいっぱいある。格好の写真の対象物だ。カメラを支える1脚 を持ち出し、シロクマの足跡を写真に撮っていた時、"Hisa、車に乗れ!"とブライアンが叫ぶ。何事なのか突如として厳しい声が飛ぶ。遠くにはシロクマがいるだけでなのに、彼の様子がとちがう。カメラ機材を抱えて車に転げこむ。これ以上ガタつくこともないほど古い車なので、乗ってもドアが閉まらない。バターンと音がするまで喧嘩腰でドアを引っ張らない限り、1回でドアが閉まったことはない。 慌てればなおさらドアは閉まらない。ドアが閉まる前に、彼は車をものすごい勢いで走らせる。私は、左手でイスの背にしがみつき、右手は天井に着いている取っ手を握る。何事がおこったのか。 "チキショー"、さっきまで明るい顔していたブライアンが怒鳴る。 座席に置いたカメラが飛び跳ねる、飲みかけのコーヒーの入ったカップが床に落ちてコーヒーをぶちまける。150メートルくらい前方で、若いシロクマがブライアンの犬を襲いかかっている。頭を低く下げたシロクマは、攻撃的な姿勢だ。 急に のどがカラカラに乾くのを感じる。車のクラクションをけたたましく鳴らすと、それに気づいたシロクマは、少し犬から離れる。しかし、すぐにまた襲いかかる。1996年に、彼は8匹の犬を白クマに食われたそうだ。"ズドーン"と、いつの間にか銃を準備した彼は、弾を発射しシロクマを撃退しようとする。効き目がない、ズドーンと2発目を撃つ。
"Hisa、弾!"といって手を差し出す。めちゃめちゃに散らかってしまった後部座席に弾があるはずだ。どこにあるかわからない、こんな時まったく役に立たない自分がはがゆくてしかたがない。"大変だ。犬がやられる。弾がない"。 寒さも手伝ってか、やたらにのどが渇く。 ブラ イアンは、犬を襲うシロクマを撃退するために銃を撃ったが効き目がない。"プーン |
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(C)1997-2006,Hisa.