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しろくま、ホッキョクグマについて、教えて! ―レストラン"トレーダーズ・テーブル"の仲間たちー(その七) (これでいいのか!五感を働かして、極北の大地に足を踏みしめたい!) "あそこにシロクマいたよ。可愛かったな。今日は、九頭も見たよ。母子もいたな。あの瞬間の写真に撮れたよ、大きく撮れたと思うなあ〜、今まであの瞬間の写真撮りたかったんだ。雪の中の真っ白なライチョウの写真も・・・・ホッキョクギツネ・。 タンドラバギー・カーでシロクマ見物は、安全だし、窓を開けた時をのぞけば、寒くもない。車の中では、直ぐに友達もできるし、夜には一緒に食事に行ったり、ビールを飲んだり出来るし、退屈することはない。 しかし二週間も過ぎると、少しずつ自分が変わってきていることが気になってくる。毎日タンドラバギー・カーでシロクマ写真を撮っていると、余裕もでてくる。 余裕からなのか、"これでは公園で写真を撮っていたり、テレビや映画を見ているのと同じではないか"と。 人に感動を伝えられるのだろうか??本当に極北にいるのだろうか。大地に自分の足で踏ん張って、大自然の鼓動を感じながら、同じ目線でシロクマを捉えたいと思うようになる。家族に説明できる程度なら、少しくらい危険や大変なことがあってもいいではないかと考えるようにもなる。 この時間になると、夕食を楽しむ人は居なくなり、ここは、ビールやワインを楽しむ客のためパブとなる。中には、酒だけを楽しみに来る人もいる。観光客はもちろんだが、観光バスのガイドや旅行者、観光ヘリコプターのパイロットなど様々だ。 少し気になるのは、ここは白人ばかりの世界のような気がする。何時も有色人種は、自分一人だ。考え過ぎかな。良く会う人の名前も少しは覚えた。 客への夕食作りも終わり、コックやウエイトレス達の遅い夕食の時間になる。彼らは好き勝手に食べ物を無造作に皿の上に載せて、客席で食べはじめる。彼らは、酒を楽しんでいる客の話を聞いたり、時には良い話し相手にもなってくれる。 顔なじみになったコックが"Hisa! まだ飽きずにシロクマの写真撮っているのか?"と遅い夕食を楽しみながら、話してくる。"勿論さ!地上最大の野生肉食動物と目があったら、興奮するよ"と、今日あった話をする。 日本にいたら、狸と目線があった写真が撮れただけでも、興奮してしまい、写真展に応募するだろう。遠くても月の輪熊の後ろ姿の写真が撮れたら、友達や親戚中に見せてまわるだろう。 "何が面白いか解らないけど、頑張るな! "と、ビールも一緒に楽しむ。 * 10日間近くたっただろうか、そんなある夜、コックが言う"おい!Hisa!元気か?あいかわらずやる気だね"。毎夜、一生懸命シロクマの情報を集めている遠来の旅人を気遣ってくれる。 笑顔でもって"勿論さ!"と言う。 "そうか。じゃあ俺の友だちに会ってみるかい? 彼は エスキモー犬を飼っているんだ。そこに行くには、だいぶ遠いけどな。その犬を飼っている場所に、シロクマが現れるようだよ。観光客はあまり行かないけど、プロのカメラマンだけ来ているみたいだよ。"と話し始める。 "えっ!その話! 本で読んだような気がするなー, チャーチルじゃなかったかな?違う人かな。とにかく紹介してくれ!頼むよ。今日のビール代払うからさ"とコックの話に飛びつく。 "オッ、ビールご馳走してくれるのかい。悪いな"とウインクする。ビールは3ドル、約240円、このくらいなら毎晩だっていいさ。 チャンスの神様の話を聞いたことがある。頭には髪の毛が前だけにあるそうだ。後には毛がないそうだ。だから見えてるうちにその髪の毛を掴まないとチャンスにならないそうだ。チャンスの神様の後からでは毛はつかめないからだ。それは髪の毛がないからだ。 この話、チャンスの神様かも知れない。 それはどういうことだ、私も変わっているということではないか。"私は、まともだよ"と言いたいが、変な人でも、なにか会うべき人のような気がする。 "明日、昼にタウンセンターの従業員食堂へ行ってみたら。彼、来てるかも知れないよ。 Hisaが行くと伝えとくから"。 "行く行く、頼むよ、必ず行くから"。 タウンセンターは、1000人もいない村にしては、場違いと言えるほど立派な施設である。地下一階、上は二階建てでハドソン湾に面して建っている。勿論、街のはずれから歩いても10分で行ける。 変わった人、彼は本当に会いたい極北の達人だろうか?危険な変人だろうか? (完)
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(C)1997-2006,Hisa.