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(生物学者を志すには ライフル銃がいる) |
チャーチルの夏、そこは命が輝くところ 極北では、尺度が違う (その六)蚊の攻撃A 凍りついているときの極北は、この地に命が存在することさえ想像できない。どこからどこまでが海なのか陸なのか、五感をとぎすましても、氷の下に埋もれた生き物を探り当てることは無理だ。荒涼とした、無彩色な耐え難い風景。 絶望的な境地では、自分というものに向かい合うほかない。家族、自分の生き方、大切なもの・・・都会にいるときは考えることもしなかった。 * 夏、雪が溶けて、大地は青々とした生命に覆い尽くされる。鳥たちは、夜も昼も生きている喜びを露に、さえずりながら飛び回る。7月ともなれば、ひなをつれたガンなどが、学校の運動会さながら活気づく。神が微笑んだように。 生物学者を志しているウイニペッグ大学の女学生に会う。彼女は、夏休みの研究課題として地球温暖化が生物に与える影響を観察しているという。 人気のない大地で、一人で大きなトラックを運転し、はしごに登って、木の芽や根などを観察している。パーカー(上着)のような網をすっぽりかぶって、蚊やブヨの防護対策に怠りがない。 ライフル銃をかついでいる。”あなた!銃を扱えるの?”と訊く。 ”もちろんよ、カナダ人だもの”と手を休めて笑顔を見せる。その笑顔に見える白い歯がまぶしい。 ”生物学者を目指す人は、みんな銃を扱えるわ”と当たり前のように話す。 ”今は夏だし、シロクマもいないから銃はいらないでしょ” ”違うわ、昨夜、私が泊まっているNothern Study Centerの料理場の裏にシロクマ現れたもの”と何気なく言う。夏でも、シロクマの危険は去らない。シロクマが出るなんてまさかと思うが、銃を携帯するのは当たり前のようだ。 寒冷地の草木は大きく成長できない。生きものが死んでも、分解するのに時間が掛かる。ここの地面の下は途方もなく厚い氷の岩盤だ。氷でできた洗面器の中にいるようなものだ。 動植物の死骸は、分解されないまま、氷の洗面器から流れ出ない。ミネラルなど栄養分が効率よく蓄えられて、栄養満点のスープとなって巨大な氷の洗面器に一杯になっている。 このスープこそ極北の命のもとなのだ。ときには、チャーチル川に流れ込み、溢れるような生命を育む。蚊やブヨと言っても、そのスープの中は、理想的な住みかなのだ。 自然の摂理とは凄い物だと改めて感じる。 * ”Hisa!なぜシロクマは、夏に穴を掘ってすごすか知っているか?" "氷が溶けてしまって、アザラシ狩が出来ないからだろう。それに穴の中は、永久凍土だから涼しいと思うよ”。カナダの東、モントリオールの郊外で、穴を1メートル位掘って、天然冷蔵庫に使っているのを見かけたことがある。 "そうだな。50点くらいかな。残りの答えは,温度だよ。15℃近くになると、蚊やブヨが活動を始める。ここの地面の下は永久凍土だから、穴の中にもぐり込めば、5℃以下の天然冷蔵庫だよ。 その穴の中では、蚊もブヨもさすことはない”と極北の先生の説明は、全て実体験からきている。 "カリブーだっておなじだぞ。蚊やブヨが嫌いなんだ。避けるために、もっと寒い北へ移動するのだ。そこで子を産むのだよ。そこまで行けば、温度が低く蚊やぶよがいないからさ"と話を続ける。 (カナディアンエスキモー犬) "ブライアン。飼っている犬たちの蚊の対策はどうしているの?"と訊く。 この前、 チャーチル駅で列車を待っていた友人の話を思い出したからだ。 蚊が犬の周りを柱のように群がっていた。犬は懸命に蚊を追い払おうとしているが、蚊の数にはかなわない。犬がかわいそうに思い、何とかしようとしたが、何もしてあげられない。 短い夏に生きる蚊も、犬も厳しい自然のなかで生きるのに一生懸命なのだと思い知らされたよ」だった。 酔っぱらったりして外で寝てしまったら、凍え死ぬか、蚊に襲われて死ぬかだ。シロクマに襲われる確立よりずっと大きい。 かわいそうな話は、母親が油断したために、外で寝かしつけた赤ちゃんが蚊におそわれて死んだニュースもあるという。 "俺の犬はな。蚊がでる日には、蚊よけのクリームを日に二回くらい顔などに塗りに行くんだよ。だから犬は大丈夫。クリームを塗らなければ、最低2リットルくらい血を吸われてしまうだろうな"と恐ろしい話をする。 この時期には、シロクマがいないので、犬たちには、危険はないと思うかもしないが、極北の大自然では許してくれない。 "ブライアン。おまえ自身の蚊対策はどうするのだ?" "蚊は問題ないな。蚊よけのクリーム顔に塗るだけさ。刺されたらほっておくよ。蚊をたたいたりすると、血をかぎつけて集まってくるから。でもなブヨ、,ウシバエやウマバエに刺されたら凄いぞ.腫れるし、痛いし゛と蚊は何でもないように話す。 "だけどな。鼻や口から蚊が入ることがあるんだ。だから蚊が一杯いる時は、口の周りを手で覆って呼吸するんだよ。水を飲むとき、間違えて肺に入れたことないか?苦しいだろう、それと同じさ゛と湧き出る命の話には終わりがない。.
明日はベルーガ、シロクジラの写真を撮りに行こう (3)まっしぐら
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(C)1997-2006,Hisa.