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シロクマが町を襲う・・・

 ( チャーチルのB&B(民宿)での出来事、11月2000年 )

朝7時過ぎ、11月のチャーチルでは太陽が昇るには、まだ早すぎる。外は鉛色で、はっきり見えないが、空と雪の区別だけが出来る。シャワーを浴びて、髭も剃った。 と言っても日本を出発してから、鼻の下や顎髭は剃ってない。

"Hisa! Hisa!"とB&B(民宿)の女将さんであるアンがシャワールームのドアを叩いて、怒鳴っている。

 "Hisa!シロクマが窓の近くにでた!"

部屋から出てみると、片手に電話器を持って、シロクマ110番へ電話をしている。この電話は、町に凶暴なシロクマが現れたらかける番号である。それは、シロクマを見物 するためでなく、危険を避けるためだ。まるで”強盗だ!”と言っているようだ。

ここ極北の家の窓は、木製で小さい。それは小さくなければ、冬の寒さには耐えられないからだ。風も強い、風速五〇メートルの風ではニュースにもならない。大きな窓なら簡単に、風が壊してしまう。寒さよけのため二重窓ガラスも常識である。

"HISA!早く窓から外を見て!"三組だけの泊まり客は、大騒ぎである。外につながれた飼い犬が、吠えまくっている。もし犬 を飼っていなければ、家を襲っただろう。なんと家から20メートルくらいの所にシロクマが現れている。

考えてみれば、昨夜なじみのレストラン・トレーダーズテーブルからの帰りに通った道からも遠くない。家には、銃もあるし窓も小さい。おまけに今は家の中にいるので、気持ちは落ち着いているが、歩いているときだったらと考えるとぞっとする。

昨日から始まったブリザードで、温度も氷点下10度以下だ。寒くなり海が凍り始めれば、シロクマは、すばらしい自然察知能力を持って、海岸線へ現れて氷に乗り、海 へアザラシ狩りをしに行こうと集まりだす。

チャーチルの町は、海岸線にあるため、海へ行くシロクマの通り道でもある。この町は、すみからすみまで歩いても10分位なので、シロクマ110番をうけた警察(RCMP)の車や野生生物監督局のトラックが、銃を持ってすぐ警戒に来た。

シロクマは、見えなくなっても、サーチライトで、危険なシロクマ探している。秋になれば、ここチャーチルでは、シロクマが町に現れるのはめずらしいことではなく、シロクマ 110番が鳴り響く。

 

(C)1997-2006,Hisa.