チャーチルの夏、命輝くところ

 

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シロクマの母子


地球温暖化〜シロクマの母子

(その五)シロクマ、ホッキョクグマ王国の旗。

      

                                   マニトバ州旗

カナダは、イロコイ語族の「村落」を意味するkanataが語源。マニトバ州はクリー族の言葉、マニトー・ボウからきている。精霊の通りにくい道という意味だ。マニトバ州の南部が世界的な穀倉地帯であるのに対して、北部は野生動物の王国である。

この辺りは、チャーチル川とネルソン(Nelson)川に挟まれていて、大量に真水が流れ込む。そのため、冬になると凍った川の水がハドソン湾へ流れ込み、そしてハドソン湾も凍る。夏は、最後まで氷が溶けない。氷に乗ってアザラシ狩をするシロクマにとっては、格好の場所だ。この真水こそ、シロクマの秘密がチャーチルにある。そのため移動ルートになっているチャーチルは、シロクマ観察の絶好の場所でもある。
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Gypsy's Bakeryの壁に飾られている写真は、野生動物王国の住人だけではない。氷や植物の写真もある。その中には、不思議な形をした木がある。観光客は気にしないが、これこそシロクマがチャーチルに現われる二番目の秘密が秘められている。

観光バスに乗ると、ガイドが"この木の名前は、フラッグツリー(旗の木)です"と説明する。クリスマスツリーに使うには、最適な大きさだ。だが、問題もある。木の北東側には枝がない。よほど岩陰など低いところに生えているのを除けば、みんな同じ形をしている。まるで国旗が竿にはためいているようにみえる。”カナダがまだどこの国の領土でもなかった時代から、ここにはたくさんの旗があった”とブライアンが自慢げに話す。


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カナダ公園局のカーム・エリオット博士
は"ハドソン湾のチャーチルへ向かって吹き込んでくる冷たい風は海を凍らせる。そして氷をチャーチル辺りへ押し流す。これこそチャーチルをシロクマの王国にした大いなる理由だ"と言う。

                

        参考資料:『-図解雑学-気象のしくみ』
        村松 昭男監修/オリンポス著
        ナツメ社1998年刊 Page99「大気の大循環」



極北も太陽からのエネルギーなしには語れない。赤道で暖められた空気が上昇し、いったん亜熱帯高圧地帯で下降する。下降した空気は、赤道へ戻る北東の風(貿易風)と、更に高緯度へ向かい南西の風(ジェット気流、偏西風)になる。

三番目の風は、中緯度で上昇して、極地方で冷やされて下降し、北東の風になる。これを極偏東風という。

北緯59度、何も遮るものがないチャーチルでは、強い極偏東風が吹きこむ。現地にいると、いつも風が吹いているのではない。昼間の日照時間が少なくなり、雪や氷が太陽のエネルギーをはねかえす頃になると、空気が温まりにくくなると、冷たい強い風が吹く。チャーチルでは、10月の終わりから、この風が強まる。

極地では、冬、1日中太陽の昇ることがない。このころ極地方特有の強い低気圧が発生して干潮時に重なると、強風が起こる。気温が急降下して、ブリザードとなる。

雪や氷の欠片も一緒に飛んできて、パーカーが”パリパリ”と音をたてる。顔に当たると痛くて、目も開けられない。北東側にある木の枝や葉は、風が運ぶ氷などで切り刻まれてしまうのだ。

フード(帽子)の周りは、毛皮がついているが、極北では毛皮は飾りではない。寒風や氷から肌を守ってくれる。化学繊維では、へなってしまう。


秋から冬にかけて、チャーチルの小中学校では、年に数回学校閉鎖になる。寒さのためだ。11月には、風速90メートルと言う烈風に出会った事もあった。
この風こそ、チャーチルの海岸やチャーチル川凍らせるもとなのだ。この寒風が、シロクマがアザラシ狩をする氷を作ってくれる。風がなかったら、シロクマにとっては死活問題なのだ。写真家は、寒風が吹くと、シロクマを撮るためにツンドラへ向う。(続く)


 

    

 

 




   

 


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